漫画パック昭和43年5月12日号小日向一夢(木俣清史)「まぼろしの美女」。蔦屋に美人画の行き詰りを懸念された歌麿が「歌満くら」の毛深いむくつけ男の手籠め図を描きあげるまでの過程を想像した内容が面白い。漫画OKの菊川英昌も恐らく変名。
豊田稔は貸本時代は表紙絵の仕事が多いのですが、数少ない漫画作品も劣らず良いです。『玉砕硫黄島』の海水温泉の場面を見ると実力がわかります。
昭和34年貸本誌投稿からデビューした吉元正(バロン吉元)は昭和37年横山まさみちに弟子入り。無名の新人が昭和38年からの貸本崩壊期に30冊以上単行本を出せたのだからこの判断は正しかったのだろう。バビル二世の浩一顔の絵を描く荒木伸吾。
石森章太郎「超特急記者ハト子ちゃん」の主人公は仕事のためなら体を投げ出すこともいとわない設定で、この時期としてはどぎつい性的描写がある。この連載終わりあたりに永井豪がアシスタントとして入ってくる。この時期からの石森のピンキー路線化が永井豪に少なからず影響を与えたと思う。
復刻版 新関健之助『富士の山』(1943年)を読みましたが、富士登山だけでなく学校や生活の様子も丁寧に描かれている戦中リアリズム漫画の名作です。なぜか国会図書館にも収蔵されてないので初めて読むことができました。
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谷真沙美「姉弟」(1961年7月)、矢代まさこデビュー作「ちいさな秘密」(1962年9月)ではどちらも戸に耳をそばだてる場面があるのですが、これを見て同一人物と判断できるものだろうかと思います。みやわき心太郎先生ほどの眼力だとそれも可能だったかもしれません。
バロン吉元「柔侠伝」は明治から四世代に渡る武道家ファミリーのシリーズ第一作です。同じ世代交代漫画のジョジョの奇妙な冒険ファンにもおすすめです。柔術師匠の父親を投げ殺して新たな人生を切り開いたディオのような暗い生い立ちの男がジョナサンの様に義と情に生きる話です。
扉絵のセーラー服がひるがえる描写は1962年の写真資料が少ない時代によく描かれたなと思います。服のシワの描き方も細かくて、当時ここまで描く漫画家は少なかったと思います。セツコ・山田先生の自伝漫画「昭和のセツコちゃん」には一番古い記憶として服がひらめく場面を描かれています。