ヒロインとの強調された関係性や、富野監督のイデオンよりも遥かに早く先行したその終末観など、ザ・ムーンは「セカイ系」に近い性質がある
エヴァが完結した今こそ、開祖である『ザ・ムーン』を新たに今風アニメとしてリファインアレンジして欲しい所だ
実際『ぼくらの』以前にも企画があったとか。
トータルでの構成はちょっと厳しい物がある『ザ・ムーン』
元になった『デロリンマン 黒船編』でも見られた傾向だが、積み重ねをブン投げる様な展開が勿体なくもある
だがしかし、本当の正義とは何か?という問い掛けを神にも等しい存在ザ・ムーンを通して描く力強いテーマ性こそがこの漫画の真骨頂だ
第1部での連合正義軍との戦い、それを率いる未来さまは平和の為に多くの人の生命を犠牲にしようとする極端な思想を持った指導者だ。
悪役として面白い設定ながらも、途中でフェードアウトするのが悔やまれる。
三島由紀夫の要素に憲法第9条や水爆を絡めた構成は、最も出来の良い部分のピークだろう。
このザ・ムーン、ハッキリ言うとラストはとても後味が悪い。
味のあるビターエンドとかじゃなく、ただのバッドエンドだ。
『マジンガーZ』と同年の連載と考えたらこの方向性はかなり異色かつ先進的。
9人の少年の意思が揃わないとムーンは動かせない。という設定が始めからシビアで無理ゲーでもある。
ジョージ秋山の代表作『ザ・ムーン』の完全版を揃えて購入。
ちょっと前までは文庫本も入手困難で途中しか読めてなかったが、全3巻合わせて1万5千円近くで手に入ったのだ(涙)
鬼頭莫宏の『ぼくらの』は本作にインスパイアされており、それ以前にもあった鬱系ロボット物ジャンルの先駆けでもある。
そこから読み取れるのは、夢見がちな男性読者の需要を満たすだけのラブコメではない、男女間の相互依存を真摯に描いたテーマ性だ。
次第に相手のあるがままを受け入れ、お互いの弱さも補い合う。
本当に山田が御都合主義的な王子様であったならば、この方向性は有り得ないと自分は強く思うのだ。
山田=王子様の批評は、市川にだけ感情移入し過ぎた結果だと思う。要は観点の違いだ
山田が貸した作中の少女漫画の男キャラと市川の類似を示唆した場面は、山田の中の理想の男性=市川という意味になる
視点を変えれば、山田にとって市川こそが自分にとって唯一無二な男性、正しく「王子様」なのだ。
確かに立場上優位だった物語開始時点での山田の役割は王子様的ではある。
クラス内では上流カーストの人気者に加えて、スタイルも抜群。正に理想の異性像だ。
だけど僕ヤバは、山田に羨望を抱く市川"だけ"の物語では無い。
市川に対する山田の感情の推移も、ちゃんと可視化されているのだ。
ヒロインの山田は男性読者の需要を意識したキャラクターではあるが、不思議と男性作者視点特有の"いらやしさ"というものがほとんど無い造型だ。
露出シーンを見せるイベントはあれど、その作り手による性格描写はちゃんと健全でもある。
主人公の市川はクラスカーストの底辺で、イタい中二病の真っ盛り。ライフワークが猟奇趣味だったりするのがご愛嬌
自分も定番所のマーダーケースブックは集めた事は無いが、多少の猟奇殺人関連本は集めていたので(現在進行形)、市川を見てると自然と微笑ましい気持ちになる
なかなか上手い設定付けだ。