いつの間にか小室孝太郎の代表作『ワースト』が復刊されている
未知の怪物ワーストマンによる人類存亡の危機を描いた終末サバイバル路線が、ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』に先駆けていた事で有名
『ハイスクール・オブ・ザ・デッド』主人公・小室孝の元ネタでもある
旧版は手元にあるが、ほ‥欲しい
今日は月光仮面登場の日だとか
月光仮面と云えばOPの「正義の味方」というフレーズが有名
川内康範作詞による造語だという説もあったが、実は19世紀から使われており、徳富蘇峰の『国民之友』や内村鑑三の著作に芥川龍之介も用いていたらしい
因みにヒーローで最初に用いたのは永松健夫の黄金バットだ
基本、心根は優しいデロリンマンなのでお互いに愛情を見せる描写はある。
だからこそラストのデロリンマンの愚かさが招いた悲劇は結構キツいエグさだ。
正直『黒船編』よりもこちらの方が強い後読感であり、読み終わるとドンヨリとした気分になるのがジョージ秋山らしさだ。
だがそれがまた良いのだ。
『デロリンマン 平成編』で特に印象深かった第3話「犬を飼う」
不良から虐待されていた野良犬を助けたデロリンマンはその犬と暮らす事になるのだが、なかなか言うことを聞かない愛犬に対して度々手を上げてしまう。
恨めしそうに見る、写実的な犬の表情絵が上手い。
平成編でもやっぱり注目してしまうのが"オロカメン"
格段に画力が向上したジョージ秋山が描く等身増しの新オロカメンは、シルエットラインと構図の捉え方がやけにカッコ良くなっている。
これだけでも本書の値段(本体3200円税別)以上の元が取れたというものだ。
今まで陽の目を見なかったのが信じがたい程に重要な位置にある『黒船編』だが、同時収録されていたリブート作『平成編』も面白い出来だ。
勢いで突き進んでいた初期に比べると、その構成は丁寧な積み立てを感じられる。
だというのに、雑誌自体の廃刊で打ち切られたのが実に惜しい。
細かい粗はあれど、そのスケールのデカさと超常的な神々とも言える存在との闘い等は未完に終わった『サイボーグ009 天使編』への解答を示したともとれる。
更に言えば人類同士の内ゲバで滅んだ『デビルマン』のテーマや要素も先行して描いていたのが、ジョージ秋山の『デロリンマン』であったのだ。
肝心の『黒船編』の内容だが、この時点ではまだ手探りといった感じで無軌道であり洗練された物ではない。
代表作『ザ・ムーン』のロボが先行しての登場に加え、ラストのオチは終末思想そのものだ。幾分ニーチェに影響を受けた節があり、「神は死んだ。」の通りデロリンマンは本物の神でもあった様だ。
自分達の種族の道徳こそが絶対的な善意だと説くペルリ星人のシンプルな見た目は、オロカメンにも近いデザインだ。
自身を"神"だと確信している狂人デロリンマンとの理念の対立は、後のオロカメンとデロリンマンとの会話にも重なる思想問答である。
ジャンプ版ではギャグマンガとしての面が強かったデロリンマンだが、オロカメンの描写を含めマガジン版ではその作風は重みを増し「人間の幸福とは何か?」といった哲学的テーマをも帯びていく。
そしてジャンプ版のラストである『黒船編』は、その作風の変化の間を埋めるミッシング・リンクと言える。