これも「他人事」
パパの視点(発言)から始まって、やる気のないのび太の視点に移っている。「おこった」という非常に客観的で他人事な感想が笑える。
上手くいっていたことが、思わぬ勢力が介入することで予定が狂ってしまう。
ヨーロッパの古典喜劇でもよく使われていた手法のようです。
【情報待機】
一コマ間をあえて空けてオチへの叙述のリズムを取る手法。「のび犬」という情報だけを伝えるなら真ん中のコマは要らないのに、わざと「ポン」と置いてある。これは最近の作品のほうが分かりやすいので、やはりB型H系の例を参照します。
「相手の返答を省略する」という表現もよく見られる。
必死に抗議するのび太の発話を、あえてドラえもんに喋らせて、本来同情されるべきのび太を滑稽に見せたり、わかりきっているマヌケな返答を省略してより滑稽に見せている。
ミックのアクションシーン②
緩急の付け方がうまい。数コマ跨いだ敵の襲撃を一コマで制してしまうのがカッコいい。
現在はなるべく殺生しないように心がけてるミックに賞金首としての暗い過去があるのもカッコよかった。
ではしずかがのび太の元に向かうシーンにはどういう音楽が必要なのか?
動いてるのはしずかだけ、のび太は危機にある。しずかは他のことを考える余裕はなく「のび太を助けなくては」という思いだけで、ただひたすら前進する。
シーンの主眼たるしずかにとっては「切迫した場面」以外の何物でもない。
基本、ちゃんと物語として説得力のある動機を拡張してドラマにしてる。
オチになってる突拍子もないことを拡張するってのはどうなのかなぁ。
いつもは「のび太さんは意気地なしじゃないわ」とか庇ってくれるのに
「弱虫よ!!」と本気で怒るのがほんとにジーンとくる…。
もしかしたら庇いつつも心の底で思ってたことが堰を切ったように表出したのかもしれない。
たったこれだけの台詞に様々なバックボーンを感じさせるF先生の言葉選びの凄さよ。
この作品も以前書いた「スターウォーズEP1」と同じで、当時コロコロコミックに掲載された「漫画版」が初めての出会いだった。コレがキッカケで翌年からゾイドを描かれたらしい。
98年なのでEP1より前の「ハリウッド映画コミカライズ」か。単行本はプレミアだとか。
無理やりこじつけするなら、女性神話には「冥界下り」という主人公がどん底に陥るパートがあって、この二作品の主人公は片思い系キャラなので、アーク的には似たようなものをなぞるのはなぞるだろうと思う。
でもシチュエーションから演出までソックリなのは説明不可能。
裏で強大な秘密を抱えるエブリデイマジックの主人公として、私は絶対に「微妙に陰キャポジ」であるほうがいいと思っている。
その方が「あいつ目立たねーし普段何やってるのかわかんない」という要素が秘密行動の説得力にも繋がるしギャップにもなる。
この辺りは出来杉は主人公になれない論にも繋がる