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「その後ふた月ばかり、亀沢町は通らなかった。ある日、同町の繍箔屋の辰というやつが、門の前を通りおったから、なまくら脇差で叩き散らしてやった。」
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「寒稽古の夜潰しをやる日、師匠から許しが出て、出席した者が各々食い物を持ち寄った。おれも重箱に饅頭を入れて行った。
夜九つ頃になると、稽古を休み、皆が持参した物を食い始めた。おれも旨い物を食ってやろうと思っていると、皆が集まって、おれを帯で縛って天井に吊るし上げた。」
勝小吉10歳。夏、小吉は馬乗りの稽古を始めます。先生の言いつけを破って遠乗りしたり、火事場へ馬で乗り込んで役人に追いかけられたり…ある時、借馬引きから上方(かみがた)のことを聞いて、馬で行ってみようと思い立ちますが…。
マンガ『夢酔独言』八話(1/4)
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「稽古を始めてふた月目に、遠乗りに行ったら、道で先生に出くわした。困って横丁へ逃げ込んだが、次に稽古へ行くと小言を言われた。
『まだ鞍にも座ったことがないだろう。今後は決して遠乗りはするな』
と言いおったから、今度は大久保勘次郎という先生に弟子入りした。」
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「一度、馬喰町の火事の時、馬で火事場へ乗り込んだことがある。今井帯刀という御使番にとがめられて、一目散に逃げた。本所の津軽屋敷の前まで追いかけられたが、馬の脚が達者だったから、とうとう逃げおおせた。」
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「一度、隅田川へも乗りに行って、土手を駆け抜けたこともある。その時は伝蔵という借馬引きの馬を借りていたが、どこのはずみか、力革が切れて、鐙(あぶみ)を片方川へ落としてしまった。そのまま片鐙で帰ったよ。」
勝小吉11歳。駿河台の一刀流の師匠の道場へ、剣術を習いに行きます。そこに来ていた嫌味な先輩と小吉のエピソードです。
マンガ『夢酔独言』九話(1/4)
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「その稽古場に、おれの頭(かしら)の石川右近将監の息子も来ていた。そやつはおれの禄高や何かをよく知っているから、大勢の前で、
『手前の高はいくらだ、四十俵ではさぞ困っているだろう』
と言って笑いおるのが常だった。」
#はやおき訳
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「おれも頭の息子が相手だから我慢をしていたが、いろいろ小馬鹿にしおるから、ある時木刀で、思い切り叩き散らし、悪態をついて、泣かしてやった。」
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「師匠にひどく叱られた。
息子は今は石川太郎左衛門といって、御徒頭を務めているが、ずる賢いばかりで覇気のない、役に立たない馬鹿野郎だ。」
勝小吉12歳。兄・男谷彦四郎さんの紹介で、聖堂で学問を始めます。ところが勉強がきらいな小吉は、毎日サボって馬乗りに出掛け、ついには先生から世話を断られてしまいます。
その後も馬乗りばかりする小吉ですが…。
マンガ『夢酔独言』十話(1/4)
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「十二の年、兄貴の世話で学問を始めた。林大学頭の所へ連れて行かれて、それから聖堂の寄宿部屋の保木巳之吉と佐野郡左衛門という先生に就いて、『大学』を教えてもらった。
おれは学問は嫌いだから、毎日桜の馬場へ行って、馬に乗ってばかりいた。」
#はやおき訳