(3/4)
「毎日毎日、よその村から若い者が来るから稽古をしてやって、あちこちに呼ばれて行ったりもした。着物も仕立て、金も少しは貯まった。通帳を弟子から預かっていたから、日用品はただで買えるし、困ることはなかった。」
   (4/4)
「そうこうしているうちに、夜が明け始めた。そのまま発とうとしたら、問屋が道中駕籠を出したから、次の宿まで寝て行った。
うまくいったが、それもそのはず、箱根を越してから、稽古道具に『水戸』という小絵符を書いて挿しておいたから、問屋場の役人どもも騙されたのさ。」
   (2/4)
「この年、凧で前町と大ゲンカをした。向こうは二、三十人ばかり、おれは一人で叩き合い、打ち合ったが、ついに敵わず、干鰯場の石の上に追い上げられた。長竿でひどく叩かれて、散らし髪になってしまった。」
 #はやおき訳
   (2/4)
「ようやく思い直して、一日、あちこちでもらって歩いた。米や麦五升ばかりに、銭を百二、三十文をもらって宿へ帰った。」
 #はやおき訳 
   (4/4)
※このへんはフィクション演出です。
小吉隠居後(あと40話くらい後)の話です。 
   (3/4)
「入江町の岡野孫一郎の地面へ引っ越してから、脚気もだんだんよくなってきた。
ふた月ばかり経った頃か、九つになる息子が御殿から戻って来た。そこで本読みの稽古に、三つ目橋の向こうの、多羅尾七郎三郎の用人の所へ通わせることにした。」
 #はやおき訳 
   (2/4)
「『明後日、常磐町で狐博奕があるから、俺と一緒に行ってくれませぬか。勝つと大金が入るから、一人では帰りが心配だから』
と、諏訪部が言った。
『おれは博奕には今まで手を出したことがないから嫌だ』
と言ったら、
『ただ行って、食物を食って寝て待っていればいいんだ』
と言う。」