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「地主が、篠田という外科を呼んでくれた。そこで傷を縫ったが、医者が震えている。おれは刀を抜いて息子の枕元に突き立て、二人に睨みをきかせたから、息子は少しも泣かなかった。
ようやく、傷が縫い終わった。医者に容態を聞いたら、
『今晩にも、命が持つか分かりません』
と言う。」
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「『今度庭へ檻をこしらえて、お前を入れると言いなさるのよ。いろいろ精一郎や皆止めたけれど、少しも耳を貸してくれない。檻も昨日出来上がったから、晩に呼びに行って押し込めると相談が決まったの。庭へ出て見てみなされ』」
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「親父が言うには、
『お主は度々悪さをするから、まずしばらく逼塞をして、己の身の振り方を考えなさい。すぐに答えが出せるものでないから、一、二年考えて決めるがいい。とかく、男は学問をしなくてはならぬから、よく本でも見ることだ』
ということだった。」
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「『海道筋三島宿では、水戸の播磨守の家来を泊めぬか。おれは御用の儀があって、遠州天宮へ御祈願の使いに行くのだが、仕方がない。今から引き返して、道中奉行に屋敷から相談するとしよう。それまで、御用の物は問屋へ預けるから、大切にしろ』
と言って、おれは稽古道具を投げ込んだ。」
文政五年(西暦1822)、勝小吉21歳。借金を重ねて無一文になり、再び江戸から行方をくらまします。
箱根関所に差しかかる小吉ですが、通行手形を持ってない。どうする…?
マンガ『夢酔独言』四十七話(1/4)
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「泣きながら脇差を抜いて振り回し、もはやこれまでと思ったから、腹を切ろうと肌を脱いで石の上に座った。するとその脇にいた白子屋という米屋が止めて、家へ送ってくれた。」
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「そこで毎日自炊するようにしたが、婆あ殿が醤油に水を入れておくやら、いろいろ嫌がらせをするから、気分が悪くて堪らなかった。よそから菓子なぞをもらっても、おれには隠して、くれないし、着物一つ仕立ててくれても、世間に悪くばかり言いふらすから、イライラして仕方なかった。」