(2/4)
「平山先生は、
『手前も今は年老いて、いつも強者の話はするが、己の手際を見せることはない。口では誰でも言えると、あなたも思うだろう。十八の武芸の手を見せてあげよう。何でも言ってみなされ』
と仰った。
おれは、
『まず一番に、野太刀を使って見せてくだされませ』
と言った。」
(2/4)
「芝の片門前に居る湯屋が、向う町へ転居する際に仲間揉めをした。増上寺の坊主が、町奉行の榊原に頼んでやると騙して、湯屋から金二十両かすめ取ったが、湯屋が本気にして、願書を町奉行に提出した。
ところが奉行所は、
『湯屋は樽屋三右衛門の担当だから管轄外だ』
と、取り合わない。」
(4/4)
「そうやってウカウカして、七月三日まで、帯刀の家に逗留していた。
ある日、江戸から石川瀬兵衛が三州吉田へ行くついでに、森の町に寄るという。おれが座敷の掃除をしていたら、甥の新太郎が迎えに来た。」
(4/4)
「親父が言うには、
『すぐに改心はしまいだろうから、一、二年考えてみて、将来について考えることだ。とにかく、人は学問ができなければならないから、よく本でも見るがいい』
ということだった。
家へ帰ったら、座敷に三畳の檻が出来ていて、おれはそこにぶち込まれた。」
(2/4)
「『お前を迎えに他の者を寄越したら、切り散らしてお前は帰らないだろう。そう相談したうえで私が来た。是非とも江戸へ一度帰って、どうとでもなされ』
と、精一郎は言った。斎宮もあれこれ意見を言うから、精一郎と江戸へ帰ることにした。」
#はやおき訳
勝小吉30歳、息子麟太郎(後の勝海舟)9歳。犬に噛まれて重傷を負った息子の元へ、小吉が駆けつけます。
マンガ『夢酔独言』七十二話(1/4)
#漫画が読めるハッシュタグ
(2/4)
「下谷の友達が、久しくおれが下谷に来ないという話をしていた。おれの家来分の小林隼太が、
『この頃は貧乏になって弱っているそうだ』
と言ったら、皆が、
『それは気の毒だ。今まで世話にもなったし、恩返しに掛け捨て無尽でもしてやりたいが、それじゃあ勝は受け取らないだろう』」
(2/4)
「本所猿江に、摩利支天の神主で吉田兵庫という者があった。友達が大勢この弟子になって神道をして、おれにも弟子になれと言う。
おれは兵庫を訪ねて親しくなった。
兵庫が言うには、
『勝様は顔が広いから、私の社に、亥の日講というのをこしらえてくださいませ』
ということだった。」