雑誌実業之日本明治４４年９月号によると、オープンしたてのカフェーライオンの前には、女給をひと目見ようと男たちがたかっていたそうです。

昭和７年の「三都喰べある記」において、天民は ”洋食嫌ひな私は、支那料理も餘り好物ではなく、與へられた機會以外には、別に食べようとも思はない” と、西洋料理や支那料理が苦手であると告白しています。

これは明治１６年出版の東京繁昌目鏡における牛店（牛鍋を出す店）の一覧。 他にも各種商店が住所入りで一覧となっており、いわば現在でいうタウンページのような構成になっています。 当時は電話がないので、電話番号はありませんが。

なぜか彼らは、冬になると赤毛布を羽織っていたので、赤ゲット（赤毛布）と呼ばれていました。 お上りさん＝赤ゲット向けに都会の外食店を紹介するとなると、外食店の住所や名前だけでなく、文化や用語の違いについても解説しなければなりません。

これは明治３５年の東京風俗志における牛鍋店の解説。 「割下」といっても赤ゲットにはわからないので、醤油と味醂を混ぜたものを割下というのですよ、と解説しています。 「しんこ」も東京弁なので、香物と翻訳されています。

明治１４年生まれの生方敏郎による「明治大正見聞史」によると、報知新聞は「台所新聞」として日露戦争ごろから家庭に入っていったそうです。 家庭の主婦が愛読していたわけですから、その内容が内食中心になるのも仕方がありません。

”日比谷公園のなかに、新らしい町が出現したと言うと、まさかと思われる方が多いと思うが、震災のあと実際に小さいながら一つの町が誕生したのである。”

”旧音楽堂の前の広場に、バラックが立ちはじめたなと思っていると瞬く間に増えて、いつか縦横の道をはさんで立ち並んだのである。荒物屋あり、酒屋あり、八百屋あり、魚屋ありで、面白いことに 中央には浴場まで出来たことだった。”

”焼け土の赤い往来には、いろいろのものを賣る店が現はれた。第一は氷を賣るもので、第二は、すゐとん、ゆであづき、肉うどんといふ風で、ライスカレー、牛どんとなったのは白来が比較的たやすく手に入るやうになってからである。”

朝日新聞東京版９月１７日には、東京各地の飲食店が商売している様を報じる記事があります。椽臺とは木の板の台のことです。 ここでも他の資料と同じように、ラーメン（支那そば）は登場しません。

幸楽の上野山下橋支店二楽は「トタン板一枚の青天井の下」で牛丼。 上野広小路鳥鍋は「天幕（テント）張り」で牛めし。 浅草の世界カフェーは「天幕（テント）張り」。 銀座寿司清周囲の飲食店は「荒板のバラック」で一膳めし

大正１４年の「東京市」の支那料理店は５２３軒。東京を代表する天ぷら屋（２９１軒）よりも数が大きくなっています。