「これが札幌ラーメンだ」では、本店で山東省出身の王文彩が作る肉絲麺（ロースーミェン）に対し、おかみさんがラーメン（拉麺）と名付けたというストーリーになっています。 これは「チコちゃんに叱られる!」で採用されたストーリーです

なぜ肉絲麺の名前をラーメンに変えたのか？ 「これが札幌ラーメンだ」によると、肉絲麺のことをを日本人客は支那そばと呼んでいましたが、 ”客の中には「支那そば」を、現在では言葉にできないほど中国人を蔑視した言い方をしていた客もいた”

しかし、これは「チコちゃんに叱られる!」のスタッフの資料誤読。「これが札幌ラーメンだ」にはこうあります ”「支那そば」のことを侮蔑を含んだ別の呼び名で言う人が絶えない” ”「チャンそば」という人が相変わらず多い”

二代目の証言では、ラーメンと命名したのは横浜から来た広東人コックらが作った「柳麺」に対してでした。 一方「これが札幌ラーメンだ」では、山東省出身の王文彩が作る肉絲麺（ユーシミェン）に対し、ラーメン（拉麺）という名前がつけられます。

札幌でラーメンの名前を定着させたのは、「これが札幌ラーメンだ」によると昭和９年にオープンしたグランドホテルでした。 そこで出されていたラーメンは、竹家食堂の肉絲麺とは全く別のものでした。

ラーメンの名前を定着させたグランドホテルのラーメンは、ネギ、メンマ、チャーシュー、ナルトが入ったラーメン。 つまり、横浜あるいは東京からきた、支那そば＝柳麺（ラーメン）だったのです。

昭和８年の大東京うまいもの食べ歩き（白木正光）によると、丸ビルの花月食堂では支那そばは「柳（らう）めん」の名前で出されていました。 戦前の資料でラーメンを漢字表記している事例はこの２つのみ。「支那そば」表記が圧倒的に多いので、どうしてもラーメン表記の事例は少なくなります。

日本橋の洋食の老舗「たいめいけん」の創業者、明治４４年生まれの茂出木心護によると、「昔は柳麺と書いてラーメンと読ませた」そうです。 茂出木さんは洋食レストラン創業者ですが、実は東京でも古参の中華料理店で修行したのです。

守貞漫稿には京都大坂の大道売、つまり道端で売る露天商売の蒲焼が一串十六文であったと書かれています。 かけそば一杯十六文ですから、かけそばを240円とすれば、蒲焼一串は240円になります。おそらく元ネタはこれでしょう。

「一串」と「一匹」では大違いです。 守貞漫稿によると、蒲焼一匹の値段は、大きな鰻で二百文、中で六十六から百文、小で四十から五十文になります。 鰻の蒲焼は今も昔も高級品だったのです

秋山は兄から、露天の蒲焼は普通のうなぎとは違う、子供の鰻（メソ）を使ったものだと知らされます。 ”あれは貧乏街の押し売りをして歩くようなもので、メソの筏、小うなぎでそれだけ安いから大衆的の露店に出たものだ。だから露店へ出ない蒲焼きは、みんな大うなぎだった”（下町今昔）

明治３９年の月刊食道楽７月号によると、通常の鰻は３０-６０匁（１１０－２２０グラム）の重さ。 現在の養殖鰻ですと、さばいて焼いた後の蒲焼の状態で２００－３００グラムありますから、鰻といえばほとんど天然物だった昔はサイズがかなり小さめだったんですね。