白土三平作品にはデジタル化された原稿が今のところ一枚もありません。とりあえず劣化したホチキスやテープを丁寧に外しました。原画の線はとてもシャープです。✕の部分を塗ったのは楠勝平さんだな多分。
「目が不自由」+「でねえか」のインパクトはかなり強いんだと思う、30年近く経っても未だに言及され続けてるから。
白土三平作品に「目が不自由でねえか」という変なセリフが登場したことは過去一度もありません。これはカムイ伝ファンの小林よしのりさんによって誇張されたギャグマンガですよ。
原稿紛失した1960年の「忍者武芸帳」を、1966年の白土三平の絵柄で小島剛夕さんが描き直した部分ですが、動物はリアルに、螢火はサエサに、重太郎はカムイに、影丸の髪はワタリになっています。同じように同時期「狼小僧」の小島剛夕さんが描き直した部分の影丸もこのまるっこい髪形になっていますね。
水木しげるさんは白土三平先生が頑張って大きな賞を受賞させて世に出すわけだけど、当時の記事を読むとやはり異例中の異例だったんだなと感じる。業界の反対もしかたないとも。ただ、この奇跡がのちの漫画界を大きく変えたのは確かだろう。
※日本読書新聞1965年11月15日号
とくに連載後半は画面の密度も高くなっていますので、カラーだとまるで別の作品を読んでいるような印象を受けます。
やはり文庫本やスマホサイズでの読書には向いていない作品だなとあらためて思います。いつかカラー版「カムイ伝」刊行の実現する日が来るといいですね。
農作業の場面でも、一人一人に細かく色を付けており、大勢で活き活きと仕事している様子がよく伝わってきます。矢口高雄さんや中村哲さんが衝撃を受けたのはこのような生活の喜びの描写でしょうか。