『釣りバカ日誌』の浜崎は1983年に初めての四国支社転勤を言い渡され、戸惑いつつ単身赴任を決断。無条件で従うAタイプ。ただしすぐ気持ちを切り替えてルンルン気分なのが笑える。作者のやまさきと北見は共に昭和10年代の戦中生まれで、国家=会社=家庭という会社家族主義が色濃い。
古谷三敏『ダメおやじ』5巻の「蒸発チクワ作戦」は、会社も家庭も嫌になったサラリーマンが桃源郷行きの資格を得て日常を脱出するという、ウルトラセブンの「円盤がきた!」みたいな切ない寓話で、高度経済成長期の日本は良かったといっても生活レベルではいろいろあったんだろうなと思わされる。
サラリーマン金太郎は新入社員時代、会社を家族ではなく恋人に見立て、「会社と恋愛がしたい」と発言した。1995年。血縁ではなく恋愛だから、別れることもある。実際にこの後、彼は何回も転職することになる。会社家族主義からの脱却を早い段階で提案したラディカルなサラリーマン漫画だった。
『いいひと。』終盤(1999年)では、バブル崩壊後のリストラに苦しむ社員たちが蜂起。これに一部の経営層が賛同し、会社家族主義の再建を提案する。これもこれでラディカルだった。
会社が家族だという見立ては、それ自体が悪なのではなく、ネグレクトや育児放棄があった場合は問題ということ。