このことは、5巻冒頭、ミラルパ重篤時の土鬼帝国から逆説的に明らかになります。即ち、ミラルパが人事不省に陥るや僧会は烏合の衆となり何ら政策決定を出来ず、易易とナムリスによる簒奪、更にはヴ王による都シュワ攻略すら許す為体です。そりゃヴ王も呆れる訳ですわ…
昨日の昼飯も取れなかった日曜勤務について、会社から「45分以上の休憩を記録してください」。いや実際休めてないんだが…解せぬ
そのことを伺わせるのが、牧人達とナウシカの別れの場面です。庭園を去るナウシカに、牧人は「貴方の為にこの庭園の入口はいつも開けておく」と心を少しでも遺していくようにー縋る様にー言います。それに対しナウシカは、牧人に対し自らの「名前」を遺していきました。心の欠片を遺していくように…
一方、諸部族側も圧政ばかり押し付ける僧会・直轄軍を恐れつつ、一面では「どうせ最前線には役に立たない癖に」と虚仮にする場面が見られます。書記長の葬儀中継場面でも敬礼せず白けていたという、80年代ソ連を彷彿とさせる組織の末期感が感じられますね…
そんなアスベルが激昂し我を忘れたのが、クシャナ一行との遭遇でした。老若男女問わず同胞を皆殺しにした首魁を目の前に落ち着けというのが無理な話でしょう。寧ろよくユパの諫止を聞いたものだと感心します。
そして蟲使い村から脱出直後のアスベルはすぐユパと意気投合します。荒天の中、ボロ船を巧く操作しつつ話を続けるアスベルにユパも「良い船乗りだ」と感心すること頻りでした。凄いぞアスベル!
同様に、トルメキア戦役勃発に際し、ジルは迷わず一人娘ナウシカを自身の代わり―族長代理―として送り出します。逆らえばトルメキアとの全面戦争になる以上、そこに選択の余地はありません。勿論、参加する戦そのものの善し悪しはまた別の問題としてですが。
代金を市長に請求とかそういう問題ではなく。「周囲の声に押されて」交換て、それは本当は替えたくなくても「周囲」への忖度を強制することになりませんか?そしてそれってあの市長とベクトルの向きが違うだけで同種の酷さですよ。それともまさか、ここでも「そこまで燃やすつもりは無かった」ですか?
それは、「そもそも腐海を守らねばならない理由は何か」に関わります。言うまでもなく腐海が人間から危険視される理由は、腐海が発する有毒の瘴気ゆえですが、これはあくまで浄化過程時の副産物に過ぎません。副産物のせいで危険視される⇒その対策に蟲というのは如何にも泥縄式に思われます。
「征地球論」ではこの場面も秀逸。拙速と遅巧、いずれを是とすべきかは宇宙人にも中々難しいようで…。因みにこの短編、オチも非常に秀逸で、彼らが随分長期スパンの文明論を論じ続けているのは何故かという伏線回収にもなっており、オススメです。