新関健之助「親分子分」(1937年)のこの階段落ちの場面は戦前の漫画とは思えないくらい見事で手塚治虫「奇蹟の森のものがたり」(1949年)でも階段落ちの場面があるけれども「親分子分」を意識して描かれたような気がします。
「親分子分」で駕籠といざり車が競争する場面がありますが、手塚治虫「来るべき人類」(1956年)でいざり車が出てくる場面も「親分子分」ぽい感じがします。
ありま猛先生の1980年再デビュー作品「ざ・大物伝」掲載のリイド社『劇画ダッシュ』を読み返してみましたが意識的に無神経キャラを描いていて、このキャラ性格がリイドコミックの出世作「道連れ弁当」に引き継がれます。「ざ・大物伝」の結末はどんな批判質疑にも動じない議員になるというオチです。
リイドコミック1986年連載開始の「道連れ弁当」でも取材抜け出してパチンコ屋に行く描写があり、このキャラクター設定は1983年連載開始の「美味しんぼ」の影響かと思っていましたが、ありま猛先生が本来描いていたキャラクターの性格のようです。
刺青を彫る場面を描いた漫画がどれほどあるかわかりませんが、劇画ではつげ義春「老人の背中」(1960)が最初に描かれたものではないかと思います。「老人の背中」はロアルド・ダールの短編小説「皮膚」(1952)を原案とした作品で、1910年代で既に電気針で彫っていた姿が描かれているのが面白いです。
#このアフタヌーンコミックがすごい総選挙
未単行本化作品ですが、この機会に紹介しておきます。
東海林秀明「バク進!!原子力ユンボ」(アフタヌーン1992年1月号)
暴走する超大型AI原子力ユンボを旧型の手動操縦超大型ディーゼルユンボで迎え撃つという展開で巨大ロボ好きな人におすすめです。
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セツコ・山田先生、学校嫌いだったそうですが20歳頃(1962年)に描かれた作品を見ると教室の様子がものすごく丁寧に描かれていて楽しそうな感じがします。
(山田節子「ルミと私」1962年6月)
扉絵のセーラー服がひるがえる描写は1962年の写真資料が少ない時代によく描かれたなと思います。服のシワの描き方も細かくて、当時ここまで描く漫画家は少なかったと思います。セツコ・山田先生の自伝漫画「昭和のセツコちゃん」には一番古い記憶として服がひらめく場面を描かれています。
川勝徳重先生の「柳が泣いている」は全174ページで、普通の貸本単行本などより長編ですが非常に臨場感があり江戸の上野を歩き回っているような気分になれます。これくらい面白い作品はなかなかないのでは。
V林田さんが漫画紹介されている『おんな警察』の芳文社コミックス単行本は常山プロ『おとこの口紅』まんだらけコミックスのカバーデザインの参考元です。両作品とも80年代芳文社漫画誌掲載。 https://t.co/tBfEnFkXu7
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真崎守デビュー5作目「波は何も云わない」(1961)はつげ義春「手錠」(1959)と同じような話で、絵も似た感じがします。つげ義春先生によると「手錠」はもともとつげ忠男先生の作品を自作として発表したものだそうです。手錠につながれて取り残されるという設定は他に原案があるかもしれません。
復刻版 新関健之助『富士の山』(1943年)を読みましたが、富士登山だけでなく学校や生活の様子も丁寧に描かれている戦中リアリズム漫画の名作です。なぜか国会図書館にも収蔵されてないので初めて読むことができました。
https://t.co/31OwSX5XlJ