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「それからおれは江戸の様子を話して、
『思い出したから会いに来たんだ』
と言ったら、帯刀親子は喜んで、
『ゆっくり逗留しなさい』
と言って、座敷を一間空けて、何不自由なく世話をしてくれた。おれは近所の剣術使いの所へ試合をしに行くやら、好きなことをして遊んでいた。」
勝小吉21歳。二度目の家出をして、遠州森町の知り合いの家へ転がり込みます。一方、江戸では小吉の妻の体調が思わしくなく…。
マンガ『夢酔独言』五十話(1/4)
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「秋葉海道の宿まで駕籠で行った。
宿で駕籠人足が、
『旦那は水戸の御使いで、天宮神社へ行きなさるのだ』
と言ったから、一人駆け出して、神社まで行きおった。
間もなく、中村親子が迎えに来た。おれが駕籠から顔を出したら、帯刀は驚いて、
『どうして来なさった』
と言いおる。」
「それからだんだん進むと、増水した大井川に差しかかった。問屋場へ寄って、
『水戸の急ぎの御用だ。早く通せ』
と言ったら、さっそく人足が来て、
『大変だ』
『播磨様の御用だ』
と抜かした。おれは蓮台で越し、荷物は人足が運んだが、水上に四人並んで水をよけるさまは、気持ちが良かった。」
勝小吉21歳。江戸を逃げ出して東海道を進み、大井川に差しかかる。大井川は人足を雇わないと渡れないが…。
マンガ『夢酔独言』四十九話(1/4)
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勝小吉21歳、二度目の家出エピソード2です。
三島宿で宿を求める小吉ですが「韮山様の御触れで一人旅は泊められない」と言われ、「水戸の播磨守の家来」のフリをしてゴネます。
「韮山様」は府中代官の江川太郎左衛門英毅さん、「水戸播磨守」は府中藩主の松平頼説さんと推測できます。
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「そうこうしているうちに、夜が明け始めた。そのまま発とうとしたら、問屋が道中駕籠を出したから、次の宿まで寝て行った。
うまくいったが、それもそのはず、箱根を越してから、稽古道具に『水戸』という小絵符を書いて挿しておいたから、問屋場の役人どもも騙されたのさ。」
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「『海道筋三島宿では、水戸の播磨守の家来を泊めぬか。おれは御用の儀があって、遠州天宮へ御祈願の使いに行くのだが、仕方がない。今から引き返して、道中奉行に屋敷から相談するとしよう。それまで、御用の物は問屋へ預けるから、大切にしろ』
と言って、おれは稽古道具を投げ込んだ。」
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「『この宿場では、韮山様の御触れで、一人旅は泊められませぬ』
と言われた。
そこで問屋場へ寄って、役人を起こして宿の世話を頼んだら、
『問屋が公儀の御触れを破るわけにいきませぬ。指図もできませぬ』
と突っぱねられた。」
文政五年(西暦1822)、勝小吉21歳。
二度目の家出をして東海道を進みますが、三島宿で一人旅は泊められないと言われ…。
マンガ『夢酔独言』四十八話(1/4)
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変わり市松:海松(みる)と色紙。
明治~大正時代頃の、地白の型染木綿です。
四角の中に七宝が描かれた市松模様の、変形と思われます。