(2/4)
「下谷の友達が、久しくおれが下谷に来ないという話をしていた。おれの家来分の小林隼太が、
『この頃は貧乏になって弱っているそうだ』
と言ったら、皆が、
『それは気の毒だ。今まで世話にもなったし、恩返しに掛け捨て無尽でもしてやりたいが、それじゃあ勝は受け取らないだろう』」
(2/4)
「取扱の者に、孫一郎の隠居について話したら、
『御前様から証拠の文を取ってくるように』
と言ったからそうして、長坂三右衛門に見せた。頭の長井五右衛門にいきさつを話して、支配から、
『隠居しろ』
と言ってもらったから、孫一郎も何とも言うことができず、隠居した。」
勝小吉が37歳で隠居し、息子麟太郎(後の勝海舟)に家督を譲った時のこと。小吉が重ねた数百両の借金の返済を麟太郎に求めて、勝家に借金取りが押しかけます。
マンガ『夢酔独言』番外編①(1/4)
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(4/4)
「出世に望みはなく、ただ命があるうちに学術を修めんと、決意をかたくした。」
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「その日は藤沢に泊まり、翌朝早く起きて宿を出た。どうしたらよかろうとフラフラ歩いていると、後ろから町人の二人連れが来て、おれに、
『どこへ行く』
と聞いた。おれが、
『あてはないが上方へ行く』
と答えたら、
『ワシらも上方へ行くから一緒に行け』
と言いおった。」
#はやおき訳
(3/4)
「先頭のやつらがバラバラと後ずさったはずみに逃げ出して、浅草の雷門で、ようやく三人一緒になった。吉原へ入ったが、源兵衛が心配だから引き返した。
番場町で飯でも食おうと思っていたら、源兵衛は先に家に帰っていて、玄関で酒を飲んでいた。それで、三人とも安心したよ。」
(4/4)
「それから一年ほど経ち、厚雪が大病になったから、いろいろ世話をした。
その時厚雪が、
『今度は回復が見込めないから、伜のことは万端頼む。嫁を取らせて御番入をするまでは、必ず見捨てずに世話をしてくれ』
と言った。
『聞き届く』
と返事をしたら、喜んで、翌日亡くなった。」