閑話休題。「浅草あれこれ話」によると、カメチャブ（牛めし）の肉は ”コマ切れの牛肉を細かく切って” いました。

大阪中の名店を食べ歩いて、これはという店を阪急百貨店に招致し、かつもともとの店の値段の４割引で売り出した。 このカレーライスが評判となり、阪急百貨店も繁盛したという話です。

１９３０年代にはすでに、東京の蕎麦屋のほとんどがラーメンを置くようになったと、右田准教授は指摘します。つまり、東京におけるラーメン普及の最大の貢献者は、蕎麦屋だったのです。

明治３７年大阪生まれの作家長谷川幸延にとって、醤油で煮込む関東煮は明治時代以降に関東からやってきたものでした。

作家にして「長崎文化の伝道者」永見徳太郎は明治２３年長崎県生まれ。 昭和２年の東京日日新聞に、永見へのインタビュー記事が載りました。 その内容が当時担当記者だった子母澤寛によって『味覚極楽』にまとめられています。

その腰弁の生態を描いた大正４年の「腰弁ノート」（安蒜政治郎）には次のような記述があります。 ”潔癖家の口にすべきにあらず　要するに　焼とりと云ひ牛丼といひ　中流人士の好んで常に喰ふべき代物にあらざるなり”

大正１１年の「横目で見た東京」（勿来関人）では、焼鳥屋に「豚の内臓なんぞ喰はせやがって」と文句をつける人間は野暮であると断じてます。 高価な鶏肉が一串１銭２銭で売れるわけがなかろう、というわけです。

これは昭和５年の銀座地図。 富士アイスは交差点を挟んで松屋の斜向いにあります。 ここの二階は絶好のパンチラ鑑賞スポットだったわけです。

守貞漫稿には京都大坂の大道売、つまり道端で売る露天商売の蒲焼が一串十六文であったと書かれています。 かけそば一杯十六文ですから、かけそばを240円とすれば、蒲焼一串は240円になります。おそらく元ネタはこれでしょう。

小説家水上瀧太郎は、昭和８年に大阪梅田にある阪急百貨店を訪問しました。 ”私共は八階の方へ行き、ビフステーキ二十錢、米飯に福神漬をそへたのが五錢、冷珈琲五錢、合計三十錢で滿腹した”

その頃のかけそば一杯の値段が十銭程度(物価の文化史)ですから、ビール一本とお通しでで２５００～４０００円ぐらいの価格感でしょうか。

昭和７年の「三都喰べある記」において、天民は ”洋食嫌ひな私は、支那料理も餘り好物ではなく、與へられた機會以外には、別に食べようとも思はない” と、西洋料理や支那料理が苦手であると告白しています。