もう一人のモンキー・パンチ(加藤輝彦)の昭和38年少年マガジン連載作品「猿とび小源太」。絵は一彦風でていねいに描いているけど個性が弱い印象。一彦の著作「コミック入門」では講談社の仕事をしていた弟に嫉妬していたような記述がある。
吉元正(バロン吉元)昭和41年「少女と黒人兵」。この時期にこんな表現をしていたのはバロン先生だけではなかろうか。山田参助先生とのトークイベントで「この頃の描き方を続けていればもっと早く人気が出ていたかも」と言っていたのも納得。
実は私が「おとこの口紅」を最初に読んだ時に、似た感覚を受ける作品として星野茂樹(原作)・ほんまりう「R探偵事務所」(1999年)を思い浮かべたのですが、ほんまりう作品は常山プロ作品に通じるところがあるのかもしれません。第4話「聖なる河」は特に印象に残っています。
鞍馬しょう平先生はバロン先生のアシスタントを経て独立されたとのこと。絵は影響を感じますが生活感のある描写が優れていて、単行本「あの頃少年物語」は昭和30年代初頭の鹿児島の生活や少年の心情が描かれた良い作品です。フィクションですがバロン先生の御実家の看板が描かれたコマがあります。
V林田さんが漫画紹介されている『おんな警察』の芳文社コミックス単行本は常山プロ『おとこの口紅』まんだらけコミックスのカバーデザインの参考元です。両作品とも80年代芳文社漫画誌掲載。 https://t.co/tBfEnFkXu7
もう1作品見つけました。つねやまたかし「帰って来た男」(トップパンチ1972年1月増刊号掲載)です。劇画調の絵柄になってます。これがまたいい作品で、長谷川伸作品のような任侠ロマンものですね。子供の描き方が面白いです。
バロン吉元「画侠伝」別冊で驚いたのが鴨川つばめの話。この話の中に「中河のりお」という名が出るがこの人は貸本誌「街」で九鬼誠と共に新人賞受賞した人。受賞作「夜更の雨」の復讐相手の子供が自分の命の恩人だと知った男が逃げていく場面が面白く気になっていたが鴨川つばめとつながりがあるとは。
別冊漫画ストーリー昭和42年8月号八州一彦「霧の中のサラリーマン」。出張先の町のバーで地作りのウィスキーを飲んで異世界をさまよう話。この最後の終わり方が素晴らしい。3作品しか残していないようなのが惜しまれる。
漫画ストーリー誌昭和39~41年連載の清水崑「かっぱ放題」。毎回「剥ぎ魔」「開け魔」などの「○○魔」の河童が出てくる2ページ作品だけれどこれが面白い。これほど自然体な感じで漫画が描けるものかと思う。
バロン吉元・荒俣宏トークイベント補足。バロン先生が初掲載作品の直後に描いたと言及した『いたずらで望遠鏡の前に毛虫をたらして覗いていた子供がアパートの屋上から落ちて窓から出てきた泥棒の上に落ちる』作品とは昭和35年「お月さま」です。
霧多永二(むたえいじ)「風と奔流」一晃社昭和36年頃刊。このペンネームと出版社からしてモンキー・パンチで間違いないはず。まんだらけZENBUのインタビューで語っていた通り白土三平の影響が大きく見られる。