かように重要な地ですので、「お好み焼きの戦前史」では神戸を大阪、広島と同等に大きく扱っています。なのに、世間では兵庫や神戸がお好み焼きの本場と認識されないのはなぜ？

一瀬直行のASAKUSA/1931年には、昭和６年頃の浅草の屋台が描写されています。 まず、値段が安い方の焼鳥屋台です。

『さうピクくせずに、胆勝を据ゑてナイフを御取りなさい』 『丸で血闘でもするやうだ』 『思ひ切って其ビフテキへ突ッ通して御覧、もつとナイフを立てなけれア切れやアしない。』

大正１１年に出版された「若返り法と男女両性の人工的変化」によると、フランスの生理学者ブロウン・セカールが、犬の睾丸をすりつぶして食塩水で薄めたものを自身に注射したところ、回春効果が得られたといいます。

大正１４年の「東京市」の支那料理店は５２３軒。東京を代表する天ぷら屋（２９１軒）よりも数が大きくなっています。

”車なり茶腕なり其の総べての設備から材料の調（ととの）へ方まで心配して呉れて、所謂賣子として働かせて呉れる人があるから、それに頼むのである”

”お客と云つても必ずしも車夫や職人の連中ばかりでなく、中には本當の燗酒の味は立食でなければ分らぬとあつて、髭の生えた連中や書生連にも歓迎されて居る”

そして昭和３年の「東京府」（注　↑のtweetの店舗数は「東京市」）の支那料理店は２８３１軒。ついに東京の伝統である寿司屋の店舗数（１７９１軒）を大幅に超えてしまいます。

大正４年発行の「腰弁ノート」には次のようにあります。 ”潔癖家の口にすべきにあらず　要するに　焼とりと云ひ牛丼といひ　中流人士の好んで常に喰ふべき代物にあらざるなり”

明治３５年の大阪においては、東京のおでん（煮込みおでん）は馴染みの薄い食べものであったと推測されます。 次に明治４３年発行の「無資本実行の最新実業成功法」です。

ラーメン屋台の起業法が書かれた震災後の本としては、大正１４年の現代職業案内（東京職業研究会 編）が、私の把握している中では最古の本です。 大正１４年には、製麺業が復活し、ラーメン屋台も再建されていたのでしょう。

”この頃（注　大正時代）は、まだ封建的な習慣がかなり強く残つてゐたから、中流以上の家庭では立喰ひなどはばかつて、家庭に出前をさせるか、店に入つても皿盛りを註文するかして食べてゐた”（東京の味　角田猛）