エポックメイキング「狼煙」。1959年11月作品。
「その精神の美しさのみを描くか、あるいはその焼けこげた屍体の醜さも描くか。僕は同時に屍体も描くことを選んだ。それがいわゆる僕の残酷シーンの開眼になった」白土三平
ブラックジャックは出だしこそ意識して眉毛極太だが、徐々に細くなってゆく。髪型は丹波哲郎主演のジキルとハイドらしい。
63年前の今日1958年9月27日、狩野川台風が江の島付近に上陸し、東京でも観測はじまって以来最大の豪雨を記録。気象庁が初めて公式に命名した台風となりました。
白土三平が当時石神井川決壊で水没の被害を受けた時に描いていたシーンがこれ。つげ義春作品にも似たようなのがあるくらい精神的に怖い。
恐怖心からの侮蔑、うわさを信じて排除の方向に進んでいく人々の展開がとてもスピーディーです。
平時鳴りを潜めている鬱憤が、きっかけをもって顕在化し、同調圧力の攻撃へと変化する。
職業上か自由恋愛かは不明だけれど、進駐軍の子として生まれた肌の黒い捨て子のミチ子。
戦後期日本の社会問題を背景にした作品で、ミチ子は地域の大人たちから酷い差別を受けますが、奇跡によりその原因が掃われるまでが前半の物語。
大手メディアに報道されて、さらに加速していく人種差別。
冒頭、夜明けから日没までの東京下町の様子が時系列で活写されます。生活する黄色いからすたち。
その中でなまけ者よばわりされるゲンさんは、洗濯や台所仕事、子育てを日々一所懸命おこなう主夫。
これは"ふしぎなこと"ですね、という皮肉までがこの少女漫画のプロローグです。
「少年剣士宮本武蔵」(1962年)の武蔵にはカムイ伝、外伝のカムイの原形が垣間みえていて、もちろん赤目プロの設立前だけれども、後年小島剛夕さんが一部リライトした「忍者武芸帳」の重太郎部分の造形や、諏訪栄名義の「片目柳生」や「ムサシ」にもこのキャラ造形が使われていたりします。
#白土三平
「ざしきわらし」(1963年)が名作として今でも色褪せないのは、技の仕組みを細かく創作しておきながら、最終的にそれを省き、テーマである少年と老人の交流に絞ったからだと思う。
屋根裏に老人が住む作用の展開部分で設定に使用しているのはグリムの「小人の靴屋」(Die Wichtelmänner)。
#白土三平
広告が無いほう(描き直し)はネーム由来の絶妙なスピード感の均衡が崩れて、もっさりともあざとくともみえてしまっている気がする。流れ大事。
※カムイ伝第8回「月刊漫画ガロ」1965年7月号
カムイ伝の子どもたちは連帯がすごいだけでなく、へんな先入観がないぶん大人より賢い。
それにしても現行のスキャンは荒すぎますね…